Laboratory for Particle Properties (Phi-lab)
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中性子・反中性子振動探索


<中性子・反中性子振動とは>
粒子は電荷が逆の反粒子と呼ばれるものがあります。中性子は電荷を持ちませんが中性子を作る3つの クォークと呼ばれる素粒子は電荷を持っているので中性子と反中性子はそれぞれ別の粒子だと区別できます。 粒子とその反粒子は出会うと光を出して消滅してしまう「対消滅」という現象を起こします。

自分から中性子が反中性子に変身したり反中性子が中性子に変身することを「中性子・反中性子振動」と呼びます。 現在、中性子・反中性子振動が実際に観測されたことは世界中で一度もありません。 中性子や陽子はバリオンと呼ばれている粒子の仲間です。バリオンには粒子なら+1、反粒子なら-1という 整数が割り振られています。これを「バリオン数」と言います。 既存の素粒子物理学では殆どの過程でこのバリオン数の和は変化しません。 中性子・反中性子振動ではこのバリオン数は変化してしまいます。 これが発見された時には素粒子物理学が大きく動くということは間違いありません。

バリオン数非保存の過程にアプローチしようとすると 寿命の短い粒子はバリオン数を破る過程を経ることなく他の粒子に崩壊してしまい、寿命が長くても陽子のような電荷を持った粒子は 電荷の保存則に反してしまうため陽子・反陽子振動は起こりえません。以上のような理由から バリオン数を破るような素粒子の振動現象を観測しようとすると中性子を使うことが適していると考えられています。 そこで中性子を使った基礎物理実験を専門とするΦ研もこの実験計画に参加しています。

<宇宙論におけるバリオン数生成に関する未解決問題>
現在の我々の宇宙に存在しているのは大量の粒子と極少数の反粒子であることは宇宙物理学での 2つの独立したアプローチがほぼ同じ結果を出すことによって証明されています。 この非対称性を説明するには未知のバリオン数が変化する過程が必要になります。

<新型実験施設 ESS>
現在スウェーデンで新しい中性子を発生させる実験施設ESS(the European Spallation Source)が計画されています。 この実験は数百メートルあるESSのビームラインの中に中性子を飛ばして、飛行中に反中性子変身した場合は反対側の ターゲットで対消滅させて検出しようというものです。
ESSの完成予想図(ESSのwebページより)

<Φ研でやっていること>
Φ研はESSにおける中性子・反中性子振動の検出実験の国際コラボレーションに参加しています。 1989年から1991年までスイスのILL(the Institut Laue-Langevin)で行なわれた実験と比べて ESSの強力な冷中性子源を用い、さらに近年発達した中性子反射鏡の技術を導入することで数桁 すぐれた実験結果を得ることができると我々の研究室が行ったシミュレーションが示しています。

ビームラインの計画


<リンク>
ESSのwebページ
Neutron-Antineutron Oscillations: Theoretical Status and Experimental Prospects