未知相互作用の探索
Φ研では重力のような質量と相互作用する未知の力やダークエネルギーを探索する実験を行っています。
重力は我々が常に感じることができる身近な物理現象です。
この重力はそもそも約300年前、ニュートンにより「万有引力の法則」として距離の逆2乗に比例する力と説明され、それはアインシュタインの一般相対性理論の非相対論的極限であるとも知られています。
しかし重力は自然界に存在する他の相互作用(電磁相互作用、強い相互作用、弱い相互作用)に比べて圧倒的に力の大きさが小さいため、今までの重力理論では説明が不十分であるとされています。
現在ではニュートン重力や一般相対性理論と取って代わるような重力理論の仮説が提唱されています。その仮説の中では短い距離の範囲でニュートン重力の逆2乗則からのズレを見ることができるとされています。
そこでΦ研では短距離での重力のズレのような未知の力を探索する実験を中性子を用いて行っています。
アインシュタインまでの重力の理論は、実験的に宇宙スケールから1mm以下程度まで確かめられています。
つまりそれ以下のスケールではまだまだ検証が足りない状態です。
Φ研ではナノメートルスケールを狙って、中性子と希ガスとの散乱分布を精密に測定し未知の力を探索しています。
もし短距離の未知の力が存在する時、中性子は標的に引き寄せられるような力が働きます。これにより中性子は希ガスとの散乱で前方に多く分布をすると予想されます。
このような分布があるかどうかを精密に測定・解析することによって、未知の力の探索をすることができます。
私たちはこの実験によって未知の力の探索感度を従来の同様の実験に比べて1桁以上向上させることに成功し、2018年に論文を発表しました。
Search for deviations from the inverse square law of gravity at nm range using a pulsed neutron beam
また、φ研はNIST、North Carolina State Universityとの共同実験として、中性子干渉計を用いた実験も行なっています。
中性子は動力学的回折現象を用いることによってマッハ・ツェンダー干渉計を作ることができます。
この干渉計は試料によって生じる2つの経路間の位相差を測ることができるため、それぞれの経路間でのポテンシャルを変えることによって干渉縞を得ることができます。
この干渉縞から経路間のポテンシャルを得ることによって、未知の力の存在を検証することができます。
[LINK]
https://arxiv.org/pdf/1712.02984.pdf